社会の多様性と広告表現 – パート1
広告表現が社会問題となり、「炎上」という形で批判を浴びる例が多々あります。今回は、普段当たり前だと思っていること、すなわちステレオタイプや固定観念にとらわれない「進歩的」なブランドの社会課題に対する信念を表現した動画広告のブランド構築においての重要性について事例をもとにご紹介します。
海外ではジェンダー(男女の描かれ方)と広告表現に関する動きが活発です。例えば、イギリスでは性別にもとづく「有害」なジェンダーステレオタイプ(世間的固定概念)を生む表現は禁止すると広告基準協議会(ASA)と広告実践委員会が発表し、2019年6月から施行されました。世界最大のクリエーティブアワードであるカンヌ・ライオンズでは、ジェンダー・イコーリティ(男女共同参画)を進める表現が、近年いくつも受賞しています。
Unrulyは、動画広告がステレオタイプ(固定観念)にとらわれている表現なのか、またはステレオタイプにとらわれていない進歩的な表現なのかによっていかに消費者のブランドに対する好意度が変化するか、また動画視聴後の行動意向やブランド想起への影響を定性分析しました。
調査概要
調査手法:Webアンケート
調査対象国:イギリス、アメリカ
調査対象者:18歳以上男女
調査動画広告:21
ステレオタイプにとらわれている動画の基準:男女の描かれ方に対して批判があった、または英国広告基準協議会より禁止措置があった動画広告
進歩的な動画の基準:男女平等を直接的に訴えている、または従来の男女の役割にとらわれず男女を描いている動画広告
進歩的な表現の動画広告はブランドに対する好意度が良く、購入意向も高い
調査した動画の中で動画視聴後のブランド好意度のスコア、購入意向のスコア、感情反応のスコアがトップ10入りした動画広告すべてが「進歩的」な動画広告でした。反対にその3つのスコアが最も低い10の動画は「ステレオタイプにとらわれた」表現をした動画広告でした。今回調査した動画の中でこの指標のスコアが最も高かった動画広告はバービー人形のドリームギャッププロジェクトでした。この動画広告は、女の子に「夢と現実の差」を埋めよう、「女の子でも何にでもなれる」と呼びかけています。長年「画一的な美」を押し付けているとしばし批判されたバービーが「進歩的」なイメージを効果的に表現していることに意外性を感じた人もいるかもしれません。
Barbie – The Dream Gap Project
「進歩的」で男女ともに消費者の反応が非常に良かったバービーの動画広告の特徴は、感情反応を活用している(「物悲しさ」や誰でも「面白い」と思えるような子供を起用したメッセージの表現)、男女の平等感と人間のポテンシャルを子供たちが訴えている意外性、そして女性は5歳頃から男性よりも劣ると認識し自信を喪失し始めるという学術研究に言及するなどメッセージに真実とデータに基づいた根拠を用いることで説得力を持たせたことで、ブランドがこの問題に真剣に取り組んでいることを表現した点でした。
今回は、進歩的な動画広告のブランド構築へのインパクトについてバービー人形の動画広告を例に、ご紹介しました。次回は、なぜ「進歩的」な表現を動画広告に取り入れることがブランド構築にとって有効なのかを調査結果をもとに解説します。
不安定な時代におけるブランドコミュニケーションとブランド構築/ブランド維持
まだまだ先行きが不安な中、ブランドがどのように消費者とコミュニケーションをとっていくのかは、非常に難しい課題です。しかし、こんな時だからこそ消費者はブランドに前向きで明確な姿勢を示して欲しいと感じています。明確なメッセージを消費者に伝えることが出来れば、ブランディングにもインパクトがあります。
弊社は、世界的に先の見えない不安がある中で、少しでもブランドや広告主のお役に立つようなインサイトを得るために動画クリエイティブに対する消費者の感情反応を分析する「UnrulyEQ」を活用し、調査を行っています。現状のような先行き不安な状況においても感情反応を活用し視聴者を引き込む動画広告キャンペーンはブランドが信頼を得、中長期的なブランディングに効果的なことが分かってきています。Unrulyの感情分析ツール「UnrulyEQ」は、ブランドのメッセージが消費者に意図通りに伝わっているかを確認することが可能です。最新の事例はこちらからご覧いただけます。
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